METAL WORKS NOTES (其ノ一)

私はいろいろな素材に触れてものを作りたいという気持ちから、多摩美術大学に入学し、その中で金属を素材として作る鍛金に出会いました。金属工芸は技術的に、鋳金、彫金、鍛金の三つに大別されていますが、その中でも鍛金は私の性格にしっくりくるものでした。しかし、鍛金といってもほとんどの人が知らないようですので、簡単に御説明しようと思います。
鍛金は、金属の板や無垢の塊を、金槌で打ち絞ったり、延ばしたりして物を作ります。鉄の棒材などを真っ赤になるまで加熱して叩いて作ることを鍛造といいます。鍛金はその名の記す通り、金属を鍛えながら作ります。では鍛えるとはどういうことなのか。ごくごくはしょって言うと、金属は適当な温度で加熱すると、軟らかくなり、加工しやすくなります(焼鈍し)。しかし叩いたりして力を加えることで硬化します(加工硬化)。一枚の薄板から、自分の欲しいかたちに起こしていくには、この軟らかくして叩くという作業を何度も何度もくり返します。思い通りのかたちにするまで何万回と叩いていくのです。鍛金は、即興的なアクションペインティングなどとは違い、過程が非常に重要になります。
Uncle Bobo「金槌で叩く」という行為は、釘を打つ他はほぼ破壊を意味すると思います。それが、叩けば叩くほどかたちになっていき、生み出すという意味につながっていくのは面白いなと思います。鍛金は溶接で材料をたすことができるので、道具の制限を守れば拡大が可能でかなり大きな物も作ることができます。
私も当初は金属というと重くて冷たくて硬いというイメージを強く抱いていましたが、鉄などは溶ける寸前まで火で熱すると、物凄い光を放ち、その色は白です。白っぽくなるまで熱された鉄は、自由に形を変えることができます。冷えきった状態ではびくともしなかったのに、バーナーなどでだんだん赤まっていく鉄を見ると、「かわいいやつめ」と思ったりしています。そして、鉄の表面に均一にココアパウダーをまぶしたような錆がふくのを見て、きれいだなあと感じます。そんな姿を目の当たりにすると、冷たくて硬いというイメージは払拭され、熱くてやわらかく、私の心の温度まで伝えてくれるようなあたたかみのある素材として認識が変わりました。
今は、「金属の音」を使ったものを作っています。音も、金属が持つ魅力的な特徴の一つだと思います。例えば鉄風鈴の涼やかさとか、お寺の鐘の遠のいていく気持ちとか。今最も私をどきどきさせてくれるのは音なので、それを使って楽しいことができたらなあと思っています。そのお話はまたいずれ。

◎写真/「Uncle Bobo」鉄製 幅800mm 高さ750mm(頭の部分をたたくと音が鳴る)

須藤玲子(すとうれいこ)
国分寺小市民
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