もむ。朝の輝かしい光の中で、「ふくらはぎ」をもむ「太もも」をもむ「脊柱起立筋」をもむ。睡眠中に緊張していた全身の筋肉をもんでもんでもみまくる。次…。押す。「大腸愈」を押す「小腸愈」を押す「三陰交」を押す。血行を促すつぼを気の済むまで丁寧にていねいに押す。そして伸ばす。「足の裏」を伸ばす「首筋」を伸ばす「背中」を伸ばす。古びた機械に油をさすように、体の要所要所を指先で点検しながら、ゆっくりと、お腹にやさしく力を入れながら起き上がるのが、腰痛生活者の朝の風景である。
私は椎間板ヘルニア患者だが、意外にそのメカニズムや対処法などは知られていない。椎間板ヘルニアはいわゆる腰痛の一種といえるが、「腰痛」、「ヘルニア」と聞くと、重いものを持ち上げたりして急に発病する「こしいた」が連想されたり、久し振りにはりきってその後数日腰に鈍痛があったりして「もうそろそろ無理はできないなあ」なんて老化のバロメーターのように考えられがちではないだろうか。しかし、この「腰痛」という病気、実は現代社会を如実に反映した、文明病とも言える疾病なのである。
歴史だか生物だかの教科書で、サルがだんだん人間になってゆく、「人類のあゆみ」みたいなグラデイションがある。あれを見ているとすぐ合点がいくのだが、時代が下るにつれて、直立二足歩行へ移行しながら腰の位地が徐々に上がってくるのがわかる。これがあまりにも急激な進化でまだ完成していないために、身体構造として腰周辺へ負担をかけているのだ。サルを見下ろせる身長を私たちが得たのは、「腰痛」という代償を払ったからかもしれない。
また、腰痛の直接的な原因として、運動不足による筋力の低下が挙げられる。交通や通信の手段が発達した現代では、近場でも車を使ってしまったり、ここ数年の「家にいながらにして〜ができる」というようなサービスの増加で、出不精になったりしてしまう。近所のコンビニが電話一本で配達をしてくれたり、犬もパソコンの中で飼える世の中である。腰痛は、普段から体を動かさないことの積み重ねで引き起こされる場合が非常に多いのである。
腰痛そして、ヘルニアの仕組み、どうやって対処するか、どのように予防するか、などなどを紹介しながら、体の真ん中から自分の生活を考えていきたいと思っている。