大仏紀行 (其ノ一)

京都、広隆寺の「弥勒菩薩」。
この仏像を見て、私は「仏像には魅力がある」と初めて感じてしまいました。日本に残る最古の仏像として名高いこの弥勒菩薩様は、厳重にケースの中に入れられて私の遠くの遠くにいらっしゃいました。人ごみをかきわけて、やっと正面に行った時、たぶん私は声を発したと思います。「ひゃー」とか、「はーれー」とかいった感じのね。美しすぎました。こんがりこげ茶色の肌に、もともちっとした肉感、肩の部分の曲線は頬擦りさえしたくなるそんな気分。組み上げてる方の右足に入ったおおきなヒビは、世界最古の貫禄を見せ付けていました。思惟というように、物思いにふっけている様子を表しているお顔。実に見事ですね。小さく可愛い口元は「うふ。」とでも言いたそう。微妙な首の傾げ方は上品な有閑マダムと、いったかんじでしょうか。そして、何よりも美しいのは指ですね。頬につきそうでつかない右手のすらーっとした中指が好きです。
と、いうように私はこの弥勒菩薩に魅せられてしまったのです。そして、私は何年も経った今でもこのように「心に響く仏」との出会いを求めています。
寺、古い、仏教・・・これらの言葉は私をドキドキさせるとともに、心を和ませるのです。まったく正反対の気持ちの動きかもしれませんが、不思議とこの気持ちが私の中で同時に働くのです。
関西方面に限らず、仏は様々なところにいます。私の住んでいる岐阜にもあやしいたくさんの魅惑の仏があります。日本中どこにだってあります。仏は木造であったり、金銅像であったり、あるいは絵であったり。表現方法は実に様々です。作者がいろんな表現するのと同じで、わたし達見るものはどのように鑑賞しようと自由です。しかし、正しい理解のためには美的鑑賞に先立ち、宗教的な意味や図像学的な意味、あるいは象徴学的な意味をある程度理解しておくことも大切なことだと最近身にしみて感じています。
誰にでも好きな食べ物があるように、好きな仏というものがあってもいいと思います。たくさんの人がお気に入りの「仏」ができるように、ちょっとずつお手伝いしていきたいと思います。
また、わたしのお気に入りもたくさん紹介していきたいです。

福島美秋(ふくしまみあき)
東海女子大学・美学美術史
mifukushima@hm.tokaijoshi-u.ac.jp